指示語の this と that



指示語には it や them などたくさんの種類があるけど、
今回は this と that に焦点を当てていこうね。


えっ、this や that なんて簡単な単語なら知ってますけど…!


でもね、this や that を「これ」「あれ」と訳せることが理解していることとイコールにはならないんだよ。
this や that が何を指しているのかまで把握してはじめて理解していることになるんだ!

指示語 this と that の基本的な用法

This is my bag, and that is hers.
「これは私のかばんで、あれが彼女のだ」



さて、最初の This は my bag を指して、「これ」と言っていて、そして次の that は hers つまり、her bag を指して「あれ」と表しているよね。

この用法はよく見かけるけど、代名詞の this と that の用法であり、近いものを指す場合に this、遠いものを指す場合に that が使われるんだ。



「近い」「遠い」に何か基準はあるの?


もちろん実際の距離として近い、遠いというのもあるんだけど、そこは話し手の気持ち次第で使っている部分も大きいので、そんなに遠くなくても that が使われる場合もあるよ。

前文の内容を受ける that



じゃあ、次の that は何を指しているのかちょっと考えてみて?

Our Japan Branch will be closing.
That will have no small effect on many employees.



えっ、この That も「あれ」と訳しちゃだめなんですよね?
えっと、第1文の何を指しているのかしら…。


まず、第1文の Branch は「支社;支店」という意味。間違っても「枝」と解釈しないでね。ちなみに、本社は head office などと表現されるよ。
したがって、「日本支社を閉めることになるだろう」となるんだ。

そこで、第2文の冒頭の That が何を指すかが問題なんだけど、これは第1文の内容をまるまる指しているんだ。



つまり「日本支社を閉めることになる」という事実を That 一語で指しているということですか?


そうだよ!
have no small effect on ~ は「~に少なからず影響を与える」
という意味なので、
「日本支社を閉めることになることは多くの従業員に少なからず影響を与えるだろう」
という意味になるんだ。

でも、that を前文の意味のまま訳出するとちょっとくどいので、「その事実は;そうすると」くらいに訳すと単に「それは」とだけ訳すよりも、that が意味することを把握した、簡潔で読みやすい訳になるよ。



あっ……ここ、かなりの重要ポイントですね(笑)。


このように、that には語句だけではなくて、先行する文の一部、もしくはすべての内容を受ける用法があるんだ。

後述の内容を指す this



that が前述の内容を指すパターンを説明したところだけど、その逆で、this が後ろに続く内容を指すことがあるんだ。

What I would like to say is this.
We can’t live without helping each other.



まず第1文で「私が言いたいことはこういうことだ」と述べて、第2文で「私たちはお互いに助け合わずに生きることはできない」と続けているね。


問題は第1文の this が何を指しているかだけですよね?


うん、一般的に指示語は前に述べた語句や内容を指すことが多いんだけど、この場合の this は後に続く一文
We can’t live without helping each other.
の内容を指しているんだ。


すでに述べられた語句や内容を指しているなら、指示語を具体的に訳すことはできるけど……。
この場合だと後に続く内容を指すから、訳せないですよね?


そうだね。この用法の this は「こういうことだ」とか「こんなふうに」など続く英文につながるような意味で解釈すると、読みやすい感じになると思うよ。